2-4 Evernoteでは、「操作」できない ー『Evernote×情報カード知的生産』第2章 Evernoteー

Evernoteでは、「操作」できない

着想をメモし、資料に変えて、Evernoteにためこんでいき、知的生産に活かしていく。では、Evernoteだけで知的生産は完結するのでしょうか。

Evernoteに入れたものは、「資料」になると書きました。そこから、Evernoteの役割が見えてきます。

Evernoteは、あくまでも知的生産を補助をしてくれる、「資料」の保管庫です。「資料」は、参照するために存在します。何かについて考えているときに、それに関する、あるいは関連しそうな「資料」を提示してくれる。提示してくれた「資料」を参照しながら、一つの形に仕上げていくことができる。知的生産のためにEvernoteを利用するのではなく、あくまでも補助してもらうために、アドバイザーとなってもらうために、Evernoteに情報をためておく。情報をたらふくため込んだEvernoteは、自分がつくりあげた、自分のための「資料の保管庫」です。
ただ「資料」さえあればいい、というわけではありません。知的生産をおこない、一つの形として提出するためには、「資料」を参考に、あれこれ考え、まとめていく、という行程を経る必要があります。
まとめていく際には、「全てを頭の中で考えない」ということが、のびのびと思考をするうえでとても大切になってきます。

全てを頭の中で考えようとすると、参照している情報の処理と、処理した情報の記憶をいっぺんにおこなうことになります。ここで言う「処理」とは、脳みそが情報を処理することを指します。”参照している情報と情報を組み合わせたり、順番を入れ替えたり、そこから着想を得たりする行為”のことです。情報を、脳みそが処理する中で、おもしろい組み合わせ、新たな発見、わかりやすい順番などが見えてくる。これを頭の中の脳みそだけでおこなおうとすると、順番や組み合わせ、新たな発見を記憶しつつ、さらなる処理を進めていくことになります。
処理と記憶を同時に行うと、脳のメモリがすぐにいっぱいになってしまいます。メモリがいっぱいになったパソコンの動作がもっさりするように、メモリのいっぱいになった脳みそは、のびのびと思考することができなくなってしまいます。何かについて考える際には、情報の処理と記憶をいっぺんにおこなうよりも、記憶しなくてもいいようにすべき。脳のメモリを”記憶”に使わないようにしたほうが、より脳みその力を引き出すことができる。

情報の処理と記憶を、別々におこなうための一つの方法が、「書き出す」です。紙とペンを用いて、考えたこと、発見したことを書き出していけば、”記憶”する必要がなく、メモリを解放できます。さらには、組み合わせを考えたり、グループをつくったり、順番を入れ替えたりという「操作」を、頭の中ではなく、実際におこなえたほうが、より記憶のための消費メモリを減らすことができます。書き出すことに加え、情報は「操作」できたほうが、脳みそをより刺激し、思考は進んでいくわけです。

Evernoteは、この「操作」がとてもしにくい。直感的にあれこれ組み合わせを変えたり、順番を入れ替えたりができない。「操作」ができないために、Evernoteは、情報を一つの形に仕上げていく行程、アウトプットをおこなうには向いていない。「資料」を「操作」ができる状態に変換する方法を、「操作」ができるよう保管しておく方法を、別に考えた方がいい、ということです。

Evernoteには「操作」することは求めず、参考になるノートを表示させて参照するという、「資料」の「保管庫」としての役割に従事してもらったほうが得策です。

では、「操作」に適したものとはなんでしょうか。それが本書にて、Evernoteと対をなす存在、「情報カード」です。